大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台高等裁判所 昭和25年(う)254号 判決 1950年7月31日

被告人

村上庄八こと

栗田庄八

主文

本件控訴はこれを棄却する。

理由

弁護人林昌司の控訴趣意第三点について。

(前略)刑事訴訟法第三百十二条第一項に、所謂公訴事実の同一性とは、公訴の基本的事実関係が同一であることを指称するものと解すべきところ、本件についてこれを見るに、検察官は起訴状において、被告人は杉原武男等と共謀して、昭和二十四年十二月二十八日、仙台米ケ袋十二軒丁十八番地遠藤きよみ方から、同人所有の衣類等八十二点を窃取したというのであるが、本件記録に添綴されている検察官の訴因、罰条の追加請求書の記載によれば、検察官は起訴状記載の窃盗の訴因と択一的関係に在るものとして、賍物運搬の訴因を追加したことは明らかであつて、その訴因は同日前示杉原武男が窃取したものであることの情を知り乍ら、前敍遠藤きみよ方附近から同市土樋二百四十番地附近まで、衣類二十五点を運搬したというのであるから、共に他人の所有に係る財物に関する犯罪であつて、互に密接の関係を有するので、右訴因の追加は公訴事実の同一性を害しないものと解するを相当とする。しかのみならず、原審第一回公判調書に依れば、被告人及び弁護人は裁判官から、訴因罰条の追加請求があつたことを告げられ、これに関する意見を求められた際、何等異議がない旨陳述しているのであるから、原審が検察官の訴因の追加を許容したのは相当である。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例